曲目解説

箏曲の曲目の解説です

 最近の練習曲 平成17年7月現在   指導 星野忠童(童門会)
曲   目 練 習 発 表 月 曲   目 練 習 発 表 月
萩の露 平成10年12月 楫  枕 平成15年10月
   15年10月大宮三曲
夜々の星 平成11年1月 秋の曲 平成15年11月
残  月 平成11年2月 
   11年4月朝霞河西
磯千鳥 平成16年4月
舟の夢 平成11年7月 平成16年5月
宇治巡り 平成11年11月
   13年7月小平滝沢
影法師 平成16年6月
笹の露(酒) 平成12年1月 冬の曲 平成16年7月
   17年2月20日 小平K
園の秋 平成12年3月 桜  狩 平成16年11月
若  菜 平成12年4月 春の曲 平成16年12月
松竹梅 平成12年6月 楓の花 平成17年1月
七小町 平成12年12月 須磨の嵐 平成17年2月
八重衣 平成13年2月 玉  川 平成17年4月独習
玉の台 平成13年9月 小督の曲 平成17年4月
根引の松 平成13年10月 嵯峨の秋 平成16年8月
尾上の松 平成13年11月 秋の言葉 平成17年6月
青  柳 平成14年1月
   14年2月小平滝沢
平成17年8月
千代の鶯 平成14年8月 岡安 砧 平成17年11月
今小町 平成14年9月
   15年3月河西
赤壁賦. 平成18年1月 19年 1月
四季の眺 平成15年1月 新娘道成寺 平成18年10月
新浮舟 平成15年5月 松  風 平成18年11月
西行桜 平成15年6月 竹生島 生田 .平成19年 5月
御山獅子 平成15年8月
   16年2月22日 K
熊  野 平成19年 7月.
長恨歌曲 平成19年 9月 那 須 野 平成19年11月

タイトル紫地は解説にリンク


















須磨の嵐 山田流 作曲 山登 万和   17分
歌詞

そもそも熊谷直実は征夷将軍、源の頼朝公の臣下にて、関東一の旗がしら、知勇兼備の大将と世にも知られし勇士なり。
 されば元禄元年の源平須磨の戦いに功名ありし物語、聞くもなかなかあわれなり。

 その時平家の武者一気、沖なる船におくれじと、駒を波間にかけ入れて一丁ばかり進みしを、扇を上げて呼び戻し、たがいにしのぎをけずりしが、見れば二八(16,7才)の御顔に、花をよそほふ薄化粧、かねくろぐろとつけたまふ、かかるやさしきいでたちに、君はいかなる御方か、名のりたまえとありければ、したより御声さわやかに、我こそ参議経盛の三男無官の敦盛ぞ、はやはや首を打たれよと、西に向かいて手を合わす、流石に猛き熊谷も、我が子のことまで思いやり、落つる涙はとどまらず、鎧の袖をしぼりつつ、是非なく太刀をふりあげて許せたまへとばかりに、あへなくしるしを上げにけり。

 無惨や花のつぼみさへ、須磨の嵐に散りにけり、これを菩提のたねとして、なきあと長く弔らはむ、心おきなく往生を、とげたまわれと言いのこし、青葉の笛をとりそえて、八島が陣へと送りしはげに情けあるもののふの、心のうちぞあわれなる。



 戦いにあって熊谷直実は我が子のことを思いながら非情の涙を流して敦盛の首をはねた
その心境が歌に現れている。泣くような響きは心に響く。 



















嵯峨の秋 作曲 菊末 検校  12分
歌詞

さらでだに、ものの淋しき名にたてる、嵯峨の辺りの秋の暮、月は隈なき柴の戸に、忍びて漏らす箏の音は、峯の嵐か松風か、尋ねる人のすさびかや。駒をとどめて聞く時は、つま音しるき想夫恋 つま音しるき想夫恋。


小督(こごう)の局を題にした一つ、嵯峨野の 小督を尋ねるよく知られた曲。尺八はメリカリがが少なく思い切り気分にのって吹ける、綺麗な曲である。   






































残 月 作曲 峰崎 勾当 22分
歌詞

磯辺の松に葉隠れて、沖の方へと入る月の、光や夢の世を早う。
                   覚めて真如の明らけき、月の都に住むやらん。
今は伝てだに朧夜の、月日ばかりは廻り来て。    


 早死にした門人の追善曲、杜甫の詩にヒントをえて故人を月が海に沈むのに例えた。
故人を偲ぶ思いが、悲しみが最初から暗く伝わってくる。幽玄の世界に導かれる。
心証というか感情表現が大事な名曲である。



































玉 川 作曲 国山 勾当  17分
歌詞

山城の井手や見ましと駒止めて、なほ水かはん山吹の花の、露そふ春も暮れ。
夏来にけらし見渡せば、波の柵(しがらみ)かけてけり。卯の花さける津の国の、
里に月日を送るまに、いつしか秋に近江なる、野路には人の明日もこん、今を盛りの萩越えて、色なる浪にやどりにし。
月のみ空の冬ふかみ、雪気もよほす夕ざれば、汐風越して陸奥(みちのく)の、野田の千鳥の声淋し、ゆかし。
名だたる武蔵野に晒す、さらす手作りさらさらと。昔の人の恋しきに、
今はたそいて紀の国の、その流れをば忘れても、汲みやしつらん旅人の高野の奥の水までも、名に流れたる、六つの玉川。


玉川を歌った六つの和歌より取りいれた。
     駒止めて なほ水かはむ山吹の 花の露そふ 井手の玉川
     見渡せば 浪のしがらみかけにけり 卯の花咲ける 玉川の里
     あすもこん 野路の玉川萩こえて 色なる浪に 月やどりける。
     夕されば 潮風こして陸奥(みちのく)の 野田の玉川 千鳥鳴くなり
     多摩川に さらす手作りさらさらに 何ぞこの児のここだ愛(かな)しき。
     忘れても 汲みやしつらん旅人の 高野の奥の 玉川の水
   






















冬の曲 作曲 吉沢 検校   21分
歌詞

  竜田川 錦おりかく神無月 時雨の雨を たてぬきにして
  白雲の 所もわかず降りしけば 巌にも咲く 花とこそみれ。
  三芳野の 山の白雪ふみわけて 入りにし人の おとづれもせぬ
  きのふといひ 今日と暮らして 飛鳥川 流れて早き 月日なりけり


古今、金葉集から歌を取りいれた 古今組の一つである。古今組は「千鳥の曲」「春の曲」
「夏の曲」「秋の曲」「冬の曲」等がある。17年2月 一人吹きを行う。優美 気品高く旋律も好きな曲である。    




























青  柳 作曲 石川 勾当 21分
歌詞
 されば都は花盛り、大宮人の御遊びにも、蹴鞠の庭の面、四本の木陰枝垂れて、
 暮れに数ある沓の音、柳桜をこきまぜて、錦を飾る諸人の、華やかなるや小簾のひま、。
 洩れくる風の匂い来て、手飼いの虎の引き綱も、長き思いの楢の葉の、
 その柏木も及びなき、恋路はよしなしや。
  これ老いたる柳の色の、狩り衣も風折も、風に漂う足もとの、たよたよとして、
 なよやかに、立ち舞う振りの面白や、げに夢人をうつつにぞ見る。 
                                げに夢人をうつつにぞ見る。
 遊行上人が奥州に下る途中、白河の関の近くで、朽ち木の柳の霊に合い、古塚の柳を
ともらう物語。謡曲「遊行柳」の一節を歌詞としている。終わりの部分が違うので、筋としては纏まりがない。石川勾当の三ものの一つ。
 竹伶会 白河関の里の合宿でこの遊行柳を訪ねた。 尺八は奥伝
   





































秋の言の葉 作曲 西山 徳茂都  15分
歌詞
  散りそむる桐の一葉におのづから、袂涼しく朝夕は、野辺の千草におく露の、
 露の情けを身にしるや。 たれ松虫の音をたてて、いとどやさしき鈴虫の、声にひかれて
 もののふが、歩ます駒のクツワ虫。哀れはおなじ片里の、いぶせき 賤が伏屋にも、つづ れさせてふ、きりぎりす。機織る虫の声々に、合わす拍子の遠砧。
   面白や、暮れゆくままの大空に、くまなき月の影清き、今宵ぞ秋の最中とは、いにしえ 人の言の葉を今に伝えて敷島の道のしをりと残しける。

解説
音もなく散りゆく一枚の落葉。曲は野辺の千草にすだく虫の音と中秋の名月に添える遠砧など、しみじみした感傷を歌い上げている。明治箏曲の代表的名作。 
  

























小督の曲 (山田)作曲 山田検校 23分
歌詞
  牡鹿鳴くこの山里と詠じけむ、嵯峨のあたりの秋の頃、千草の花もさまざまに、虫の恨 みも深き夜の 月に松虫招くは尾花、萩には露の玉虫や、そよぐをぎ虫 くつわ虫、
 鳴く音につれて仲国が寮の御馬賜りて、宿直(とのい)姿の藤袴。
  たづぬる人の面影に、立つ薄霧の女郎花、それかあらぬか幻の、蓬が島根たづねわび、駒引きとむる笹のくま、やすらうかげの松風に、通う爪音つま恋の、音による鹿にあらね ども、昔おぼゆる笛竹や、合わす調べにまがいなき、声をしるべにしたいよる、嵯峨野の
 奥の片折り戸、相夫恋の唱歌は、比翼の翅の雲井恋ひ、盤渉調の調べは松の連理の枝 にかよう。
  小督の局 世をしのぶ住家も、明日は大原に、かえん姿の名残とて、夜半に手ならす
 つま琴の、岩越すおもいせきかねて、涙に袖をかしはばや、人目もいかがあやめがた、
 糸の色音をしるべにて、さし入る月の雲井より、御使いにまいりしと、かしこき君のみこと
 のり、野辺のおち方わけ来つる、露の玉章さしよする、妻戸の端の縁の綱、またひき結ぶ
 御かえりごと、添えて賜る五衣、きぬぎぬおくるほどもなく、迎ひの車たてまつり、
  昔にかえるももしきや、千代を契りの松の言の葉。

  小督の悲恋物語は平家物語や源平盛衰記の哀れ深い挿話であり、多くの詩歌に詠われている。生田流には「嵯峨の秋」がある。山田流四つものの大曲である。
  



























秋の曲 作曲 吉沢 検校  18分
古今組で 秋の歌 六首を歌っている。

歌詞
  きのうこそ早苗とりしが いつの間に 稲葉そよぎて 秋風の吹く
  久方の 天の河原の 渡守 君渡りなば 楫かくしてよ
  月みれば ちぢにものこそ かなしけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
  山里は 秋こそことに わびしけれ 鹿の鳴く音に 目をさましつつ
  散らねども かねてぞ惜しき もみじ葉は 今を限りの 色とみつれば
  秋風の ふきあげにたてる 白菊は 花かあらぬか 浪のよするか
雅楽調の気品の高い作品 京都の松坂春栄が明治に手事を加えて全国で演奏されるようになった。 尺八譜 二段は一段の替手として書かれており、一段からチラシにはいる。
 冬の曲と並んで吹き応えがある。   

























笹の露 作曲 菊岡検校 22分
酒の徳をたたえたもの 掛け合いはお互いに差しつ差されつの表現か? ささ 笹の露は酒の別名。
歌詞
 酒は量りなしと宣いし聖人は上戸にやましましけん。三十六の失ありと諫め給いし仏は
下戸にやおわすらん。なにはともあれ八雲立つ出雲の神は八しぼりの酒に大蛇を平らげ給う。これみな 酒の徳なれや。
 大石のさけつる畏みも、帝の酔いの進めなり。姫の尊の待ち酒を ささよささよとの言の葉を 伝え伝えて今世のひとも きこしおせ ささ きこしをせ ささ。
 劉伯倫や 李太白 酒を飲まねばただの人。 吉野竜田の花紅葉 酒がなければただのとこ。よいよいよいの よいやさ。

 尺八は後半難しい。   



























八重衣 作曲 石川勾当 24分
 百人一首の中から衣に関する歌を五曲 春から冬にかけて順に歌っている。
衣の歌を八重に(重ねて、沢山)歌うので「八重衣」の題名がある。
大曲で石川勾当の、三ものの一つ。
歌詞
 君がため はるの野にいでて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ
 春過ぎて 夏来にけらししろたへの 衣ほすちてふ 天の香具山
 みよしのの 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり
 秋の田の かりほの庵のとまあらみ わが衣手は露にぬれつつ
 きりぎりす 鳴くや霜夜のさむしろに 衣かたしき 独りかも寝ん
                            衣かたしき 独りかも寝ん

 練習期間は大変長くなった。    





















岡安砧 山田流古曲 今井慶松 編曲   12分
歌詞
 前唄
月の前の砧は 夜寒をつぐる。 雲井の雁は琴柱(ことじ)をうつして 面白や。
 後唄
夜半の砧のしぐれの雨と、うちつれたちて、けふ(きょう)の遊びは

きぬた 
 キヌイタとは  槌で布を打ちやわらげ、つやを出すのに用いる木または 石の台。
またはそれを打つこと。女の秋冬の夜なべ仕事とされた。(広辞苑より)     































御山獅子 作曲 菊岡検校  20分
御山は神路山、伊勢の皇太神宮の神域を中心に獅子舞風に歌った。前唄は神路山の荘厳さ、後唄は秋の夕べから冬にかけての気分をよく表しており、派手で浮き立つような気分の曲。
 獅子舞:中国の清涼山は普賢菩薩のおわします聖地で、その麓に石橋があって獅子という想像上の霊獣が守護しているという伝説により、我が国でも古くから獅子を悪魔払いの霊獣とする信仰があった。獅子舞は神前にて悪魔払いの舞を舞う。又はその
舞唄の意味もある。

歌詞
 されば都は花盛り、大宮人の御遊びにも、蹴鞠の庭の面、四本の木陰枝垂れて、暮れに数ある沓の音、柳桜をこきまぜて、錦を飾る諸人の、華やかなるや小簾のひま。もれなく風の匂い来て、手飼いの虎の引き網も、長き思いの楢の葉の、その柏木も及びなき、恋路はよしなしや。
 これ 老いたる柳の色の、雁衣も風折も、風に漂う足もとの、たよたよとして、なよやかに、立ち舞う振りの面白や。げに夢人をうつつにぞ見る。げに夢人を現にぞ見る。    























春の曲 作曲 吉田 検校  19分
古今和歌集より春の曲六首を選び歌詞としている。古今組の一つ。古今組とは古今和歌集にある和歌数種を組み込んで一つの曲としたもの。春、夏、秋、冬、千鳥の曲の五曲を言う。

   鶯の 谷よりいづる 声なくば、  春来ることを 誰か知らまし。

   御山には 松の雪だに 消えなくに、  都は野辺の 若菜つみけり。

   世の中に、たえて桜の なかりせば、  春の心は のどけからまし。

   駒なめて いざ見に行かん ふるさとは、 雪とのみこそ 花は散るらめ。

   吾が宿に さける藤なみ たちかえり、  すぎがてにのみ 人の見るらん。

   声たえず なけや鶯 ひととせに、  ふたたびとだに 来べき春かは。    





























赤壁賦 作詞  松本一太  作曲 中能島欣一
歌 詞
月明らかに星希に、南に飛ぶや 鵲(かささぎ)と 戟(ほこ)を横たえ歌いけん。
勝ち誇りたる英雄(つわもの)も 時は移りて今いずこ。
うき世に遠き身の軽く、一葉の舟に月の夜を 酒汲みかわすおもしろや。
消ゆれば夢か 絲遊(いとゆう)の 儚(はかな)き身をば天地に 容れて短きいのちかな。
流れも尽きぬ長江の 月を肴に夜もすがら、酌む杯の数々や。
欠けては盈(み)ちつ、盈ちては欠くる、笑いつ泣きつ村雲の、
                                晴るれば円(まろ)き月の顔。
ああ、逝く水は日夜も捨てず、千秋万古 流れは尽きず。
                       愚かの迷ひ 何をか淀まん。
かの山間の名月と、かの江上の清風は 見れども飽かず、取れども尽きず。
皎々として千里を照らし、飄々として万戸に入る。
                       あらおもしろの風情かな。
いざ盃を酌み交わし、流れる水に舟を任せん、 流れる水に舟を任せん。

昭和9年 NHKの委嘱により中之島欣一作曲。歌詞は中国「宗」の宰相 蘇軾が友人と赤壁に遊んだ時の「前赤壁賦」に基づいている。
赤壁の戦いの前夜 魏の曹操が酒を酌み交わして唄った 「対酒当歌 人生幾何・・・・」
で始まる 「短歌行」 の一節 「月明星稀 鳥鵲南飛」 よりとっている。

ケアハウス「つるのや」で平成15年頃 松本益歌能氏 と 共演した。改めて練習をし直して 歌のすばらしさも解る。





















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